2023年の東京。帝都大学の教授である佐伯は、毎日のように学生から「魔法の授業」を依頼される。
彼は実際には、かつて大正時代に存在した魔法教師の魂を引き継いでいる。
その記憶は、1925年の東京で、帝国大学の女学生・千代子と恋に落ちたこと。
だが、彼女の家は旧華族で、彼は平民だった。
千代子が病に倒れ、最後の手紙を渡す直前、佐伯はその場を離れた。それが彼の人生の大きな傷となった。
そして今、彼は時間の断絶によって、過去と現在を結ぶ「手紙」を通じて、再び千代子と触れ合う機会を得
る。
彼の魔法は、手紙を書くことで過去へと届けることができる。だが、この能力には制約があった。
一つの手紙を書くごとに、自身の記憶が少しずつ失われる。
また、過去に届けた手紙が現在に影響を与える可能性がある。これは、彼が隠していた「硬則」だった。
千代子の孫娘が、佐伯の講義を受けていた。
彼女は、祖母の遺品の中に発見した古い手紙を、佐伯に見せた。その手紙には、佐伯の筆跡が残っていた。
彼は驚愕するが、それを受け入れざるを得なかった。
手紙を交換する中で、佐伯は過去の自分に警告を送る。
だが、その手紙が実際に届いたかどうかは分からない。
そして、ある日、彼は突然記憶を失い、自分の存在を忘れてしまう。
最終的に、千代子の孫娘は、彼の手紙をもとに、自身の人生を改める。
彼女の選択は、佐伯の過去を変えることになる。しかし、彼自身はその結果を知ることができない。
手紙は、二度と届かなくなった。佐伯の魔法は、使い切った。そして、彼はもう一度、未来に向き直る。
ノスタルジックな時代の終わりを、静かに受け入れる。


