昭和初期の東京・銀座。

戦時下の空気の中、帝国大学の旧制文学部は依然としてハイカラな香りを漂わせていた。

かつては華族として暮らした佐伯千鶴は、家督を継ぐ資格を失い、家族の名誉を守るために自らの手で道を

開こうと決意する。

彼女は旧知の教授の紹介で、帝国大学の特別試験に応募した。

試験当日、千鶴は他の受験生たちとは明らかに違う装いで登場した。

黒いモーニングコートに白いシャツ、赤いリボンが胸元を彩る。

その様子を見て、同級生たちは驚きの視線を送った。だが、千鶴は無視し、試験問題を解き始めた。

問題の一つは「大正時代における西洋文化と伝統の衝突」についての論述だった。

千鶴は、父の日記を思い出しながら筆を走らせた。

父は当時の宮廷に近しく、その陰謀に巻き込まれた人物だった。

その記録から得た知識を活かし、彼女は見事な解答を完成させた。

しかし、試験終了後に千鶴は呼び出された。主催者側は彼女の身分と試験結果を疑い、調書を取った。

ある資料が彼女の過去を浮き彫りにしていた——父が関与した某事件の記録だった。

その件で彼女は追放され、それ以来、一度も公的な場に立つことはなかった。

それでも千鶴は沈まなかった。彼女は自分の名前を掲げて再試験を申し出、新たな試験官を選出した。

そして、新しい試験の内容は「現代と過去の対話」に設定された。

最終日の夜、千鶴は試験場で一人だけ残った。

彼女は父の日記を読み返し、その中にある一文を思い出した。「過去は死んだものではない。

ただ、私たちがそれを忘れているだけだ。」

試験の結果は発表され、千鶴は合格した。

だが、彼女が目指すのは単なる学位ではなく、宮廷の陰謀を暴き、自身の名誉を取り戻すことだった。

その第一歩として、彼女は帝国大学の学長に直談判し、真実を追求するための研究室を開設することを許可

を得た。

大正ロマンの残響の中に、彼女の物語は始まった。