1923年、関東大震災から五年。
帝国大学の考古学部では、関東地方の古墳群を対象とした調査が進められていた。
その中核を担うのは、二十二歳の女学生・佐藤静子だった。
彼女の指導教官は、陸軍少佐で考古学者でもある山田健一。戦争と歴史の狭間で生きる男だった。
静子は、山田の指示通りに遺跡の掘削を続ける。
しかし、地層の中から現れたのは、当時の文献には記載されていない異質な陶器と、刻まれた文字が読めな
い石碑だった。
山田は静子に、「これは国の機密だ」と言い、掘り下げることを禁じる。
静子は疑念を抱く。彼女は夜中に資料室へ潜入し、かつての調査記録を漁る。
そこには、同じ地点でかつて「不気味な出来事」が記されていた。
そして、その記録を書いた人物の名前——山田健一。
次の日、山田は静子を呼び出し、彼女が見つけたものを「盗聴器で聞き取った」として厳重に処分するよう
命じる。
静子は、自分を監視されていることを確信する。
彼女の周囲には、いつも同じ制服を着た男たちが尾行していた。
静子は、師匠である山田に会いに行く。山田は冷静にこう言う。
「君は私の弟子として、この国を守るためにここにいる。だが、君が知るべきことは限られている。
」その言葉に、静子は初めて涙を流す。彼女は、自分の存在がただの道具だと気付いた。
やがて、静子は山田の研究室に潜入する。そこには、彼が長年隠してきた写真があった。
それは、昭和初期の軍事演習場で、若き日の山田が何かを埋めた瞬間を捉えたものだった。
その場所は、彼女の調査地点と同じだった。
静子は、山田の手によって、自分が引き渡されたという事実に気付く。
彼女は、自分の調査が国家の陰謀の一環であり、師弟関係もまた虚構だったことに気づく。
最後に、静子は山田に問う。「私は何者ですか?」山田は沈黙した。
それ以来、彼女の姿は大学には現れず、どこかへ去った。
その場所には、今も静子が発見した石碑が置かれている。
文字は読めないが、風化するたびに新たな痕が刻まれている。
それは、誰かがその場所を訪れるたびに、書き足しているように見える。
静子の行方は、未だに謎のまま。だが、彼女が残した石碑の上には、一つだけの文字が刻まれていた。
それは、「光」という字だった。


