帝国大学付属女子学園を追放されたのは、騎士団長の娘・千代子。

西洋式の軍事訓練を受けて育ち、自らの「能力」を発揮したことで「不適格」とされた。

その能力とは、触れた瓦礫が軽くなること——誰もが「重さは神の定め」と信じる世界で、彼女だけが、壊

れた石に手を置けば、その質量が三分の一になる。

震災から三週間。復興工事は官庁の命令で「人力で一つずつ運べ」と決まった。

西洋の機械は壊れ、鉄道は寸断され、人々は手で瓦礫を積み上げた。

千代子は夜な夜な、女子学園の裏手で、捨てられた教科書の山を運んだ。

誰も彼女の手が軽く動くのを気付かない。ただ、彼女が毎日、同じ場所に現れるだけだった。

ある朝、工事現場の監督が、彼女が運んだ瓦礫の量に気づく。三日分の作業量を、一人で一夜で運んだ。

疑って手を触れたら、その石が、まるで紙のように軽い。

監督は黙って、彼女を工事の「軽運び係」に登用した。誰もが「女が力仕事?

」と笑ったが、彼女の手が触れた瓦礫は、誰かの子供の玩具、誰かの妻の鏡、誰かの夫の時計——すべてが

、軽く、速く、運ばれた。

規則がbiteしたのは、第三週目。

軍需省の指令で「非効率な個人作業は禁止」と、機械化のための鉄製カートが導入された。

しかし、カートは満載で転覆し、三名の作業員が圧死した。千代子はそのカートに手を置いた。

音もなく、カートは空っぽのように浮いた。彼女はそれを、一人で、工事現場の最奥まで引いた。

その日、二十三人の作業員が、彼女の手が触れたカートを引いた。

覚醒は、力の増幅ではなかった。

彼女は、誰かが「無駄に重い」と放棄したものを、ただ「軽くする」だけだった。

そして、その軽さが、人々の心を動かした。

母が子どもに「お父さんの遺品、千代子さんが運んでくれたよ」と語る。

女学生が、拾った瓦礫の破片を、彼女の手にそっと置く。誰も言わない。

でも、朝の通勤路で、彼女の前を歩く男が、重い荷物をわざとゆっくりと動かすようになった。

哀愁は、復興の町に残った。彼女は、明日も、誰も見ない場所で、壊れた時計の針を軽くする。

誰も彼女の能力を理解しない。

でも、誰かの手が、彼女の手に触れた瓦礫の上を、そっと滑らせるようになった。

彼女は、もう騎士団長の娘ではない。

ただ、重いものを軽くする、女学生。