東京郊外の閑静な住宅街で、佐藤家は一見して普通の家庭だった。
だが、義理の妹・美奈子に溺愛しすぎた長男・健太郎の行動が、家族の常識を歪めていく。
彼は美奈子の通う私立学園の教師に就任し、授業時間外も彼女の姿を探し続けた。
ある日、美奈子は異世界転生をテーマにしたライトノベルに夢中になる。
その本には「悪役令嬢」が登場し、無理矢理の結婚と追放という運命が描かれていた。
健太郎はそれを偶然読み、胸が締め付けられるような感覚に陥った。
家規として「義理の兄妹は結婚不可」と定められていたが、健太郎はそれを無視した。
美奈子を自分の部屋に呼び出し、抱きしめる。
だがその夜、彼女の手首から不思議な模様が現れた——それは異世界の魔術刻印だった。
翌朝、美奈子は突然失踪した。警察は「失踪届け」を受理するも、手がかりは皆無だった。
健太郎は学園の図書室をあさり、そのライトノベルの著者を探し出す。
そこには、かつて大正ロマンを描いた小説家がいた。
彼は美奈子を異世界へ送り込んだのだ。
そして、彼女の未来を守るために、健太郎自身を追放せざるを得なかった。
最後に残されたのは、彼女の手首に刻まれた「溺愛の証」という文字。
不気味な静寂の中、健太郎は自らの部屋を焼却し、その灰と共に自分を消した。


