電車が停車した。プラットフォームの照明が揺れ、乗客の顔が不気味に歪む。

彼女は振り返るが、後ろには誰もいない。ただ、時計が止まった街が広がっている。

地下鉄の改札を出ると、建物の様子が変わっていた。

石造りの壁に木製の看板がぶら下がり、銅製の時計がなくなり、代わりに竹の棒が地面に刺さっていた。

人々は洋服ではなく、紋付の着物を着ている。

駅員が「おはようございます」と言うが、その口調はまるで昭和の映画の中から出てきたかのように古い。

彼女は名前を尋ねられたが、答えられない。記憶がない。

しかしふと気づく、自分の手首に刻まれた文字——「宮本」。それは旧姓だった。

今では使われない名前だ。

路地裏で出会った男が「貴女はどこから来たのか?」と問う。

彼は帝国大学の教授であり、かつての恋人だった。

彼女の記憶が戻らないことに気づき、彼は秘密を打ち明ける。

この街は「時間の断絶」と呼ばれる現象によって、昭和の初期に戻されたのだ。

そして、この場所にいる者は皆、ある条件を満たさなければ元の時代に戻れない。

彼女は政略結婚を迫られることになる。実家の財閥が、彼の家との提携を求める。

しかし彼は、自分自身がこの現象の原因であることを知っている。

彼はかつて、時間を操作する装置を開発したが、失敗し、この街を過去に閉じ込めてしまった。

彼女の選択肢は二つしかない。

この男と結婚し、時間を戻すための鍵を握るか、あるいは彼を殺し、自らが時間を操る権限を手にするか。

夜明け前に、彼女は男の部屋に忍び込む。彼は眠っている。その横に、古い日記が置かれている。

そこには、「私はもう一度、彼女と出会いたい」と書かれていた。

彼女の顔が映るページに、彼のペン字が重なっていた。

朝が来ると、街はまた変化する。時計が戻り、電車が動き始める。

彼女は元の時代に戻るが、記憶は残っている。そして、彼の家の門に立つと、彼が待っている。

彼の手には、新しい日記が握られている。