地下鉄の終点で降りた女は、制服の裾を翻しながら校門をくぐった。

帝国大学の法学部では、特別講義として「異種族適応試験」が開催されていた。

彼女は獣人であり、かつては人間の社会に排斥された存在だった。

しかし今、この試験に合格すれば、法的に「人」として認められる。

試験の第一関門は論文。テーマは「時代の流れと個人の選択」。彼女はペンを握りしめ、書き始めた。

だが、自分の言葉がどうも変だ。なぜか、人間の語感とは違う。文章の間に、動物的な感覚が混じる。

教授が読んだ瞬間、彼女の提出物は「不適格」の烙印を押された。

次の試験は実技。場所は図書館の暗闇。彼女は記憶の断片を辿り、過去の自らを探した。

幼い頃、母親が教えた言葉が浮かぶ。それは、獣人特有の「声の呪文」だった。

しかし、その呪文は今、人間の言葉としてしか通じない。彼女はそれを口にした。

すると、図書館の本が自動的に並び直す。これは、試験の一部だった。

最終試験は、時間制限付きの「日常」。彼女は、街中の雑貨店や駅構内を歩き、人々と接する。

だが、すべてが異様に遅く感じられる。

歩く速度、話すペース、すべてが「スローライフ」のルールに従っている。誰も彼女の姿を見て驚かない。

なぜなら、この世界では「ゆっくり生きる」ことが普通だったからだ。

試験の結果は、彼女が「人」として認定されたこと。

しかし、同時に、彼女が持つ「獣人としての感覚」が、この世界のルールと衝突していることも明らかにな

った。

彼女は、どちらを選べばいいのか、答えを出せなかった。

しかし、その答えは、彼女自身の未来に刻まれていた。