東京・新宿の地下で、銅貨一枚で運命が売買される時代が始まった。
明治末期から続く「金銭信用制度」が、ある日突然、夢の中での取引を現実の価値に自動反映させる仕組み
に変わった。
商人・佐伯誠は、関東大震災の瓦礫の中から浮上した記憶の断片で目覚めた。
夢の中では、彼はかつての敵だった帝国大学の旧友と協力し、異世界の資源を操るギルドを立ち上げていた
。
そのギルドの財産は、夢の終了とともに現実の銀行口座に自動入金された。
最初は数万円の差額。
だが、夢の中で30時間働いた翌朝、彼の個人資産が120万円に跳ね上がっていた。
銀行窓口で「夢の労働報酬」という項目を確認する際、窓口員が眉をひそめ、手帳に「異常収益」と赤字で
記した。
政府機関が動き出した。
「夢の取引は国家統制対象」とする通達が発布された。
夢の中でのギルド運営は「集団的意識操作」と見なされ、参加者全員に「現実認識検査」が強制される。
誠は、夢の中で初めて「戦争準備」の契約を結んだ。
その契約は、夢の中で作られた軍需品の供給契約だった。
現実世界では、翌週、神奈川の工場で大量の無名部品が製造され、軍需品として政府に納品された。
官房長官の部屋で、夢のログがスクリーンに映し出された。
そこに映るのは、誠が夢の中で描いた「未来の兵器設計図」——
それが、現実の技術開発計画と完全一致していた。
彼の夢は、未来を予知するシステムだった。
だが、その夢の内容は、国家の支配下にあることになった。
誠は、夢の中に再び戻った。
今度は、自分の夢に侵入している別の人物の影を見た。
黒いジャケットを着た男が、彼の夢のギルドの会議室で、新たな契約書に署名していた。
夢の中の夜明け時、誠は一晩で500万円の利益を得た。
だが、その金額は、翌朝、すべて「国庫補填資金」として没収された。
夢の世界は、もはや自由な場所ではなくなった。
現実の壁が、夢の中にも押し寄せていた。
彼の手元に残ったのは、一本の鉛筆と、夢の最後に刻まれた文字だけだった。
「君の夢が、世界を変える。でも、世界が、君の夢を食べる。」


