帝都の復興工事が進む1923年秋、瓦礫の下から発光する樹木群が発見される。

地中深く埋もれた「ガラスの森」は、SF的な生態系を持ち、酸素を吸収せず二酸化炭素を排出して成長す

る逆植物だった。

この森の中心で、耳が尖り、肌が透ける少女が休眠状態で見つかる。

彼女の存在が公表されると、政府は即座に隔離令を出し、帝国大学の研究チームが派遣される。

男はその警備主任として配属された。

彼は戦地帰りで義手を持つ元軍人だが、エルフの目が覚めた瞬間、拳銃を投げ捨てた。

彼女の呼吸一つに心臓が締めつけられる。

医師が検温しようと近づいただけで、男はその手を義手で握り潰した。翌日、病院の鍵が全て溶けていた。

男の溺愛が始まり、現実が歪み出した証拠だった。

エルフは言葉を話さず、代わりに周囲の金属が彼女の感情に反応して変形する。

怒れば鉄柵がねじれ、悲しめば時計の歯車が停止する。

男はそれを「守らねばならないもの」としか見ていない。

彼女が寒がったと知ると、研究所の暖房設備を破壊して自分の体熱で体温を維持させようとする。

看護婦が介抱しようものなら、彼女の服が突如酸化してぼろぼろに剥がれる。

正体判明は雨の夜に起こった。

調査班が彼女の血液を分析し、DNAにシリコン結晶が混入していることを突き止める。

彼女は地球由来の生命ではなく、大正初期に落下した隕石から発生した自己増殖型有機機械だと判明する。

彼女の成長は都市の金属資源を食い尽くす可能性があると報告書は警告した。即刻処分が決定された。

男はその命令を受け取った直後、一人でガラスの森へ戻る。

彼女が触れた土壌は次々と水晶化し、根が電線のように地下へ延びていく。

軍の特殊部隊が到着する前に、彼はすべての通信ケーブルを切断し、監視塔を倒した。

彼女の頭を自分の胸に押しつけ、外套で覆い隠す。

その姿勢のまま、全身の皮膚がガラス質に変わり始める。

ハラハラは市民の日常に忍び寄った。

帝都の郊外で、井戸のポンプが勝手に動き出し、水道管が螺旋状に成長して住宅を貫いた。

子供が遊んでいた鉄棒が少女の笑い声に反応して花のように開く。

新聞は「奇跡の復興」と報じるが、男の義手はすでに彼女の一部となっていた。

彼の鼓動が彼女の神経となり、心拍一つで街灯が点滅する。

最終的に男は消えた。

公式記録には「行方不明」とあるが、ガラスの森の奥深くで、二つの影が一つの樹木となって立っているの

を見た者がいる。

その樹は毎晩、微かな振動で同じメロディを奏でる。男が戦地で口ずさんだ、故郷の子守歌だった。