昭和二十年、東京郊外の団地で生まれた千春は、実家が焼け落ちた後に叔父の下で育つ。

その叔父はかつて帝国大学を出て、関東大震災の復興工事に携わったエンジニアだった。

一方、同い年の隆一は、銀座の洋品店を営む名家の息子として育ち、帝国大学に進学する。

二人は小学校から幼なじみだが、境遇の違いは日に日に深まる。

千春は夜遅くまで働いて、自らの夢を描こうとする。

一方、隆一は家族の期待に応え、将来的には経済界の重鎮になることを目指す。

ある日、千春は隆一の家の近くで、彼が若い女性と手を繋いでいるのを目撃する。

それは、隆一の親戚の令嬢で、将来の妻候補だった。

この出来事から、千春は隆一との距離を置こうとする。

しかし、隆一は千春を心底慕っており、彼女に告白する。

だが、千春は「君のような人とは生きていけない」と断る。それ以来、二人の関係は冷え込む。

昭和二十五年、千春は地元の工場に就職し、毎晩、深夜の街角で本を読む。

ある夜、隆一が同じ場所に現れる。彼は千春に呼びかけ、過去のことを謝罪する。

だが、千春はもう受け入れられない。

二人は互いの想いを認めつつも、未来を見据えることはできず、ただ静かに別れを告げる。

この時、千春の手には、隆一が贈った古いレコードが握りしめられていた。

それは、彼らが子供の頃に一緒に聴いた曲だった。

昭和レトロの世の中では、物質的豊かさが人々の心を満たすはずだった。

だが、千春にとって、それ以上のものがあった。

それが、失われた恋であり、そして、自分自身の生き方だった。

硬質なルールとして、千春は「一度離れたら戻らない」と決めた。隆一は「自分の道を選ぶ」と約束した。

二人の選択は、それぞれの人生を決定づける。

郁展開の中で、幼なじみの恋は、結局、誰にも答えられないまま終わる。